「突発性難聴」を「自律神経失調症」と診断されて放置されたお話。
突発性難聴という病気をご存知ですか?
その名の通り突然耳が聞こえなくなる病気です。
あなたのまわりにも意外と突発性難聴になったことがある方いると思います。
わたしもなりました。多分。
というのも、実際に症状が出てから難聴と診断されるまでに5年近くブランクがあったので、確実にそうとも言い切れないのですが。
おかげで治療の時期を逸してしまいました。
今日はそんな突発性難聴のお話を綴ります。
突発性難聴とは
なんの前触れもなく、突然片耳(両耳のこともまれにあるようです)の聞こえが悪くなる病気です。
聞こえなくなるだけではなく、耳鳴りや耳が詰まったような感じがしたり、普段と聞こえ方が違ったりすることもあります。
めまいを伴うことも少なくありません。
難聴とめまいがありますが、メニエール病とは違って繰り返すことはありません。
この難聴は幅広い年齢に起こるのですが、特に40〜60歳代に多くみられます。
原因は
今のところ原因はわかっていません。
音を感じ取って脳に伝える「有毛細胞」という細胞が耳の中にあるのですが、これがなんらかの原因で壊れてしまうとされていますが、その原因がわからないのです。
有力なのはウイルス感染説と血流が障害されている説。
ストレス、過労、寝不足があると起こりやすいことがわかっています。
治療方法
ステロイドを内服か点滴で投与するのが中心になります。その他に血流を良くする薬を使ったり、ビタミン剤を使ったりします。
ストレスや疲労が原因と考えられるときには安静にして過ごします。
ここで一番の注意点!
1週間以内に治療を開始することが重要になります。
治療開始が遅くなればなるほど治療効果が下がり、完治が難しくなります。
治療を受ければみんな完治するわけではないですが、適切な治療で約40%の人は完治しますし、半分の人は改善がみられます。
わたしの右耳は難聴です
わたしは高校3年生の時にめまいにおそわれました。
大学入試、前期日程の試験前日の夜、ベッドに座ろうとした瞬間にバランスが取れない感覚に陥ったのです。
「あれ?なんだか世界が回ってる気がする…。」
そう思いながらその日は眠りました。
翌朝もなんだかおかしい、試験中も問題文を見ていると気持ち悪くなる。
流石におかしいと思いましたが、緊張のせいだと思って最後まで受けました。
帰宅後も症状は続き、心配した母親に近所の内科を受診するように言われ、その病院を初めて受診しました。
「なんだか世界が回っているようで、立ち上がるとふらっとする」と話す18歳の女の子に、先生は大した診察もせずに「自律神経失調症だね。点滴しとこうか。」と言いました。
実際には点滴ではなく、初めて見る大きな注射器で注射をされたのです。
今ならわかります。あれはメイロン。炭酸水素ナトリウムです。
内耳の血流を増加させるので間違いではないのですが、めまいと言えばメイロンみたいにすぐ注射する先生もいますが、もう一歩踏み込んで欲しかったと今では思っています。
その後10日くらいかけてめまいは落ち着きました。
ただ、車やエレベーターにのると耳が詰まったような感覚があり、なんだろうと不思議に思っていました。
そんな出来事も忘れた大学生の頃、医学部の実習の一環で聴力検査をしました。
よく健康診断でやる「高い音」「低い音」みたいな検査ではなく、耳鼻科でする「125Hz」「250Hz」…というような細かいやつでした。
同級生と順番に検査をしていたのですが、わたしの検査の途中で友人に「右耳の聞こえ悪くない?」と言われたのです。
ここで初めて難聴であることを知りました。
耳鼻科の先生に再度検査をしてもらい、「今まで気づかなかった?めまいとか耳鳴りとか、耳が詰まったりとかしなかった?」と聞かれた時にすぐに思い出しました。
先生はやるだけやってみようとステロイドの薬を出してくれましたが、残念ながら効果なし。
今のところ生活の中で困ることはほとんどありませんが、聴診器を使う時に左耳に頼って聴診しています。
めまいがして、脳疾患を心配して病院を受診する方もいます。
医者になってから「めまいがするから脳の検査をしてほしい」と言ってきた人で、突発性難聴だった方を何人かみています。
自分の経験から治療の時期を逸するようなことはあってはいけないと思っているので、めまいで受診した人には必ず実際の音を聞かせて左右で違いがないかを確認しています。
今となってはあの先生は反面教師…感謝はもちろんしていません。
そして「自律神経失調症」という病名が大嫌いになりました。
耳の聞こえが悪いだけではなく、耳鳴りがする、耳が詰まる、めまいがする人は、一度耳鼻科を受診してください。
治療の時期を逃すことのないように!