出産時のトラブル 恥骨結合離開を知っていますか?

妊娠、出産には色々なトラブルがあります。

妊娠初期にひどいつわりで苦しんだ方、切迫流産や切迫早産になって安静を指示された方…。

全く何もなかったよ、という方が珍しいのではないでしょうか?

 

わたしは吐きつわりとよだれつわりに苦しみ、落ち着いたと思ったら切迫になり、5ヶ月頃からは後鼻漏に悩み…。

産めば全部解放される!と思っていたのに、産後は恥骨結合離開で苦しむことになりました。

なってから初めて知った「恥骨結合離開」。

産後慌ててネットで検索しまくりました。

わたしの経験談とあわせて綴ります。

 

 

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恥骨結合離開とは

妊娠3ヶ月頃から産後数日頃まで「リラキシン」というホルモンが分泌されます。

このリラキシンの作用により骨盤まわりの靭帯や関節を柔軟にすることで産道が広がり、妊娠の維持と出産の補助の役割を果たしているホルモンです。

へそに指を当て、お腹に沿っておろしていくと骨に当たります。ここが恥骨ですが、左右にある恥骨は真ん中に靭帯があり、ここを「恥骨結合」と呼びます。

通常は2〜3mmですが、妊娠中にもやや広がり、出産時に大きく離開するため分娩直後は7mm程度になります。

これが12mm以上になると病的離開となり、急激な離開により靭帯が損傷して強い痛みを伴います。これが「恥骨結合離開」。

ちなみに20mm以上に離開する場合は「恥骨結合破裂」と呼ばれます。

 

症状は何よりまず「激痛」です。動くことで激痛が走ります。

そのため、立ち上がる、起き上がるといった動作ができなくなります。寝返りもうてません。

痛みが治まってきても骨盤が不安定であるため脚をあげることができず、歩行することができません。ただ、すり足で後ろ向きに進むことはできます。

 

原因

ホルモンで恥骨結合がゆるむこと+αがあっておこることが多いです。

もともと姿勢が悪かったり、運動不足で筋力が低下していたりすると、妊娠中から恥骨結合に痛みを感じることがあります。

また赤ちゃんが大きかったり、骨盤が狭かったりしても、出産時に急激に負荷がかかることになります。

 

治療方法

基本的には保存的治療をします。つまり、手術が必要になることはほぼないということです。

過去の論文などを見ていると40mmに開いていたり、経過をみていても改善がない場合は手術をすることもあるようですが、症例報告されるくらいですので稀なことです。

ほとんどは1ヶ月もすれば歩行できるようになります。

 

まずは鎮痛剤をのんで安静にします。

無理に歩いたりせず、骨盤ベルトがある場合は使用して安静にします。

よく整体などホームページで「骨盤を整えます」とあります。これが必要かと言われると、医師としては「するなら自己責任で」。

一つ言えることは

ほぼ全例で恥骨結合は1ヶ月程度で元の距離に戻り2、3ヶ月で安定します。

それ以降も症状が続く場合は次の手として検討しても良いと考えます。

 

わたしの場合

出産トラブル

切迫早産で安静を指示されていたため、妊娠中の運動量は激減していました。

さらに出産前に産院で助産師さんから恥骨結合部分を押された時に痛みがありました。

今思えばこの時点で不安満載ですが、当時のわたしは全く気にせずに普段通りの生活を送っていました。

出産予定日の夜に陣痛が始まり初産婦の平均的な時間で出産したのですが、3つのトラブルがありました。

一つ目が回旋異常。赤ちゃんは骨盤を通りぬける時に横に回りながら降りてくるのですが、我が子は逆向きに回ってしまったのです。一旦戻ってくれたものの十分に回りきらず、半ば無理やりのようにイキんで、助産師さんにお腹を押してもらっての出産でした。

二つ目が予想以上に赤ちゃんが大きかったこと。推定体重3200gだったのですが、出てきてびっくりの3700gオーバー。エコーをした先生も助産師さんもびっくりしていました。

三つ目が子宮が収縮せずに出血が多かったこと。産後しばらくは安静を言い渡され、2時間ほどは寝たままになっていました。

 

起き上がれない

産後安静解除になり、さあ起き上がろうとした時でした。

あれ?力が入らない。お股が痛い!

すぐにナースコールを押して「動けないんです」と助産師さんに訴えました。

その助産師さんは「え?」という顔をした後、すぐに「包帯持ってきて!師長よんで!」と同僚に指示を出し、骨盤あたりを触った後に師長さんと二人で骨盤をぐるぐる包帯で締めてくれました。

「今ベルトがないから包帯でごめん」と言いながら、「骨盤が緩んでいるんだと思う。」と説明してくれました。

幸いにも電動ベッドだったため頭は起こすことができ、我が子もだっこできましたが、ベッドから降りることも寝返りを打つこともできませんでした。

先生に「恥骨結合離開でしょう」と説明を受け、もともと処方されていたボルタレンを飲みながらの安静生活になりました。

 

一緒に退院したい

初日は尿道カテーテルを入れてもらい、ベッド上で生活をしました。

2日目は痛みはかわりませんでしたが、コツを掴んだのか、起き上がるのが上手になっていました。なんとか立ち上がることもできます。

助産師さんたちは母子同室にしなくてもいい、哺乳瓶やミルクは全部準備するから大丈夫、寝返りのお手伝いもする、と言ってくれたのですが、我が子と一緒にいたかったわたしは頑張って少しずつ動くことを決めました。

夫が前もって出産予定日付近に休みを取ると伝えていたため、産後一週間お休みを取れたことも幸いでした。

日中は夫の手を借りて、夜は助産師さんの手を借りて、なんとか母子同室も可能な状態でした。

長い距離は車椅子で移動していたのですが、3日目に気がつきました。

「わたし後ろ向きになら歩ける!」

それからは後ろ向きに休憩しながら歩いていましたが、ナースステーションにいた看護師さんから「誰かがムーンウォークしてる!ってびっくりした」と言われた時は夫と大笑いしました。

産院のこの雰囲気がわたしを落ち込ませなかった一番の要因だと思っています。本当にあの産院で産んでよかったと今でも夫と話しています。(←コロナをきっかけに、先生も高齢だったこともあってお産をとらなくなったそうです。二人目もここでって思っていたのに…。)

先生からは「入院期間を延長しても良い」といわれましたが、なんとか予定通りに我が子と一緒に退院したいという一心で歩く練習をしていました。

 

結局歩けないけどなんとかなるか

産後5日たちましたが、結局はムーンウォークが精一杯で、立ったままでは着替えることもできない状態でした。

痛みも続くし、動くと恥骨の真ん中がごりごりいってるし…。

本来なら入院継続で安静にした方が良かったのでしょう。が、県民性なのか、うちの家族の気質なのかわかりませんが、母もわたしも「大丈夫でしょ。なんとかなるよ。」と。

幸い、わたしは里帰り出産で、母が自分の経験からリクライニングベッドを準備してくれていました。

実家は平屋で段差がほとんどなく、親のサポートを受けられる安心感もあって予定通りに退院しました。

 

退院を前にトコちゃんベルトを購入しました。

恥骨の緩みが問題だったので、トコちゃんベルトⅠです。←ここ大事! 

 

結局3週間ほどはずっとムーンウォークでした。

それでも徐々に痛みはなくなり、足を前に出すこともできるようになり、3段の階段を後ろ向きで上り下りできるようになり。

1ヶ月経つ頃には前向きに歩行できるようになりました。

今では普通に歩いていますし、子供と一緒に走っています。

整体に行くことも考えましたが、少しずつ良くなっていたので、調べるだけ調べて結局行きませんでした。口コミよかったところが遠かったんですよね…。

 

 

さいごに

最初に動けなくなった時はとても不安でしたし、色々検索しました。

こどもの世話ができないのではと心配しました。

結果、恥骨結合離開の一番の薬は「時間」なのだと思います。

反省しているのは、もう少し安静にしたほうが治りは早かったのかな…ということ。

 

なにより周囲のサポートが必要になるこのトラブル。

今この症状がある方は周りに甘えてゆっくりしましょう。